[ファンタジー] ―非現実的な事を、夢でも見ているかのように心に思い浮かべること。―

Shin Meikai Kokugo Dictionary, 5th edition (C) Sanseido Co., Ltd. 1972,1974,1981,1989,1997






先輩が「空飛ぶ魚」と 言ったので
ムカつくくらい真っ青な空 
顔上げて見てやったら

「何だ、ただのヒコーキじゃねーっすか」

そしたら先輩何て言ったと思う

「ミヤはロマンが無いなー」
だってさ

でもね
なるほど

ヒコーキの機体真っ赤に染めたら
ムカつくくらい真っ青な空
すいすい泳ぐ紅い金魚みたいに見えるじゃないか

先輩はその魚
手元に収めようと
文明の利器を操り始める

さながら金魚掬いのようなそれ

照準を合わせて
先輩がボタンを押したら

文明の利器から
何かミサイルでも発射されるんじゃないかと
オレは胸を高鳴らせていたけれど

押した後に出たのは

カシャッと言う乾いた音だけ

醒めた夢

白昼夢なんて見るもんじゃないと思うオレを尻目に
小さいけどなかなか上手く取れたと
先輩は御満悦

「へー、じゃあお手前拝見」

先輩の肩越しに見た文明の利器の画面

真っ青な空に
雲と見紛うような

やっぱり真っ白な機体

ここにひとつ
ロマンとやらが消え去った

オレだけが知っている
真昼のファンタジア

                 二00三・八月一日






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